2014.11.03
経営戦略を考えるその前に2つの注意点
このニュースレターでは、実務上で成功していくための経営戦略の考え方についても少しずつお伝えしていきたいと思います。
さて、いきなり具体的な理論に入っていく前に、前提条件として注意しなければいけないことがあります。
経営戦略を考える上での注意点は、次の2つの質問に集約されると思います。
[1] その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?
[2] その理論や考え方は、自社と相性が良いものか?
それでは、以下、一つ目から見ていきましょう。
【注意点1】その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?
これは要するに、企業を人の体に例えた場合、「健康に良くないものを食べたら、体を壊しちゃいますよ~。」という注意喚起です。
ここで、欠陥を含む経営理論の例題を挙げましょう。
ドラッカー先生が最初に言い出したとされる、「目標管理システム(MBO: management by objectives)」でいきたいと思います。
これは、簡単に言うと、「社員自身に業績目標を立てさせて管理させたら、やる気が上がって万々歳」という理論です。
・・・ですが、これにはいくつもの反証があります。(ドラッカー先生だって、全能の神ではありませんので、間違えます。)
反証を3つ挙げましょう。
[反証1] 簡単にクリアできるような控え目な目標を立てて、挑戦しなくなる。(高い目標を立ててクリアできないと、頑張ったのに評価されないため。)
[反証2] 会社側(経営者や上司)と目標をすり合わせれば、みんなが嫌いなノルマ管理システムの出来上がり。(経営者や上司が「自分で言い出した目標だろ?」と取り立てに来て、みんな具合が悪くなる。)
[反証3] 目標に対して、どれくらい達成できたか測る(評価する)ことにエネルギーが注がれ、時間や経営資源を浪費する。(少ない労力で公平に上手く正確に測れる業種と言えば、保険営業マンくらい?)
さて、この反証は、私も現実に何度も経験しました。
ソニーの元上席常務の天外伺朗さんも、ソニーが崩壊したのは、こういったシステムを導入したからだとさえおっしゃっています。(雑誌インタビューにて)
最近読んだ、経営者必読の超オススメの書籍、
カレン・フェラン(2014年)『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。(コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする)』大和書房
の一節にも、このシステムについての反証が挙げられていました。
さて、例題はいかがだったでしょうか?
注意点その1の「その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?」の重要性をご理解いただけたでしょうか。
【注意点2】その理論や考え方は、自社と相性が良いものか?
二つ目の相性の注意点は、要するに、「自分の体に合わないものを食べたら、気持ち悪くなりますよ~。」という注意喚起です。
さて、例示のお話をしましょう。
先日、お客さんに誘われて参加した経営者セミナーで、こんなことがありました。
講師のコンサルタント(兼社長)が「ポジショニング」という言葉を使って、さもそれが唯一の戦略思考であるかのように話していたため、私は冷や汗をかきました。
なぜ冷や汗をかいたかと言うと、私をそのセミナーに誘ってくれたお客さんは、まったく別の戦略思考パターンが得意な経営者だったからです。
そのセミナーでコンサルタント(にしては不勉強だと思いましたが・・・。)が生じさせた誤解を、釣りの寓話に例えて再現してみます。
——–寓話はじめ——–
釣り人「ん~、なかなか釣れないなあ。」
釣りコンサルタント「ここで何を釣っているのですか?」
釣り人「アジを釣っています。」
釣りコンサルタント「この“場所”で、アジ釣りですか・・・。」
釣り人「何か問題でもありますか?」
釣りコンサルタント「もっと良い方法がありますよ。」
釣り人「えっ!!それはどんな方法ですか?!」
釣りコンサルタント「実は、あっちのほうで、サバがうようよしている穴場があって、他の釣り人もほとんどいないのです。釣竿をたらすだけで、ばんばんサバが釣れますよ!」
釣り人「それは魅力的ですけど、私はここでアジを釣りたいのですが・・・。」
釣りコンサルタント「魚なんて、釣れればなんでも同じじゃないですか。だったら、あっちに移動して、サバをたくさん釣ったほうがいいじゃないですか。」
釣り人「待ってください。私はアジがもっと“釣れる道具”を工夫して、ばんばん釣れる“釣り方を練習”して頑張っているのです!もう少し努力すれば、きっと釣れます!」
釣りコンサルタント「きっと? それは確かですか? それで釣れなかったら、どうするのですか?」
釣り人「それは・・・。」
釣りコンサルタント「“道具とか練習”とか良くわからないことを言ってないで、ちゃんと“釣れる場所”を探さないと、後で大変なことになりますよ?」
釣り人「・・・わかりました。あっちに移動して、サバを釣ってみます。」
その後、少しの間、釣り人はサバをたくさん釣ることができました。
しかし、ほどなく、他の釣り人が同じ場所にたくさん来て、あっという間にサバが釣りにくくなってしまいました。
そして、不本意にも、次から次と釣れる場所を探し続けて焦る毎日になってしまいました。
もし、アジ釣りをあのまま頑張って続けていれば、他の釣り人がとても簡単には真似できない方法を編み出し、同じ場所でアジ釣りを長い間、楽しめたのに・・・。
——–寓話おわり——–
さて、寓話は以上ですが、いかがでしょうか?
戦略思考パターンと自社との相性を見誤ると、最悪の場合、寓話のようなことが現実になるかもしれません。
どの理論や考え方も万能ではありませんので、「それが何かをわかって導入する」ということが大切だと思います。
これから、戦略思考パターンがいくつもあることをセミナーでもお伝えしていきたいと思います。
自社と相性が良さそうなものを見つけてください。
以上の2つの注意点を守りながら進めていきましょう。
さて、いきなり具体的な理論に入っていく前に、前提条件として注意しなければいけないことがあります。
経営戦略を考える上での注意点は、次の2つの質問に集約されると思います。
[1] その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?
[2] その理論や考え方は、自社と相性が良いものか?
それでは、以下、一つ目から見ていきましょう。
【注意点1】その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?
これは要するに、企業を人の体に例えた場合、「健康に良くないものを食べたら、体を壊しちゃいますよ~。」という注意喚起です。
ここで、欠陥を含む経営理論の例題を挙げましょう。
ドラッカー先生が最初に言い出したとされる、「目標管理システム(MBO: management by objectives)」でいきたいと思います。
これは、簡単に言うと、「社員自身に業績目標を立てさせて管理させたら、やる気が上がって万々歳」という理論です。
・・・ですが、これにはいくつもの反証があります。(ドラッカー先生だって、全能の神ではありませんので、間違えます。)
反証を3つ挙げましょう。
[反証1] 簡単にクリアできるような控え目な目標を立てて、挑戦しなくなる。(高い目標を立ててクリアできないと、頑張ったのに評価されないため。)
[反証2] 会社側(経営者や上司)と目標をすり合わせれば、みんなが嫌いなノルマ管理システムの出来上がり。(経営者や上司が「自分で言い出した目標だろ?」と取り立てに来て、みんな具合が悪くなる。)
[反証3] 目標に対して、どれくらい達成できたか測る(評価する)ことにエネルギーが注がれ、時間や経営資源を浪費する。(少ない労力で公平に上手く正確に測れる業種と言えば、保険営業マンくらい?)
さて、この反証は、私も現実に何度も経験しました。
ソニーの元上席常務の天外伺朗さんも、ソニーが崩壊したのは、こういったシステムを導入したからだとさえおっしゃっています。(雑誌インタビューにて)
最近読んだ、経営者必読の超オススメの書籍、
カレン・フェラン(2014年)『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。(コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする)』大和書房
の一節にも、このシステムについての反証が挙げられていました。
さて、例題はいかがだったでしょうか?
注意点その1の「その理論や考え方は、間違い、反証、非現実的な前提条件がないか?」の重要性をご理解いただけたでしょうか。
【注意点2】その理論や考え方は、自社と相性が良いものか?
二つ目の相性の注意点は、要するに、「自分の体に合わないものを食べたら、気持ち悪くなりますよ~。」という注意喚起です。
さて、例示のお話をしましょう。
先日、お客さんに誘われて参加した経営者セミナーで、こんなことがありました。
講師のコンサルタント(兼社長)が「ポジショニング」という言葉を使って、さもそれが唯一の戦略思考であるかのように話していたため、私は冷や汗をかきました。
なぜ冷や汗をかいたかと言うと、私をそのセミナーに誘ってくれたお客さんは、まったく別の戦略思考パターンが得意な経営者だったからです。
そのセミナーでコンサルタント(にしては不勉強だと思いましたが・・・。)が生じさせた誤解を、釣りの寓話に例えて再現してみます。
——–寓話はじめ——–
釣り人「ん~、なかなか釣れないなあ。」
釣りコンサルタント「ここで何を釣っているのですか?」
釣り人「アジを釣っています。」
釣りコンサルタント「この“場所”で、アジ釣りですか・・・。」
釣り人「何か問題でもありますか?」
釣りコンサルタント「もっと良い方法がありますよ。」
釣り人「えっ!!それはどんな方法ですか?!」
釣りコンサルタント「実は、あっちのほうで、サバがうようよしている穴場があって、他の釣り人もほとんどいないのです。釣竿をたらすだけで、ばんばんサバが釣れますよ!」
釣り人「それは魅力的ですけど、私はここでアジを釣りたいのですが・・・。」
釣りコンサルタント「魚なんて、釣れればなんでも同じじゃないですか。だったら、あっちに移動して、サバをたくさん釣ったほうがいいじゃないですか。」
釣り人「待ってください。私はアジがもっと“釣れる道具”を工夫して、ばんばん釣れる“釣り方を練習”して頑張っているのです!もう少し努力すれば、きっと釣れます!」
釣りコンサルタント「きっと? それは確かですか? それで釣れなかったら、どうするのですか?」
釣り人「それは・・・。」
釣りコンサルタント「“道具とか練習”とか良くわからないことを言ってないで、ちゃんと“釣れる場所”を探さないと、後で大変なことになりますよ?」
釣り人「・・・わかりました。あっちに移動して、サバを釣ってみます。」
その後、少しの間、釣り人はサバをたくさん釣ることができました。
しかし、ほどなく、他の釣り人が同じ場所にたくさん来て、あっという間にサバが釣りにくくなってしまいました。
そして、不本意にも、次から次と釣れる場所を探し続けて焦る毎日になってしまいました。
もし、アジ釣りをあのまま頑張って続けていれば、他の釣り人がとても簡単には真似できない方法を編み出し、同じ場所でアジ釣りを長い間、楽しめたのに・・・。
——–寓話おわり——–
さて、寓話は以上ですが、いかがでしょうか?
戦略思考パターンと自社との相性を見誤ると、最悪の場合、寓話のようなことが現実になるかもしれません。
どの理論や考え方も万能ではありませんので、「それが何かをわかって導入する」ということが大切だと思います。
これから、戦略思考パターンがいくつもあることをセミナーでもお伝えしていきたいと思います。
自社と相性が良さそうなものを見つけてください。
以上の2つの注意点を守りながら進めていきましょう。
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